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  第9回 2007年の「今年の漢字」にIT業界を思う
 
2008/01/23 (Wed)
代表取締役社長 拜原正人

1995年から日本漢字能力検定協会が、毎年全国公募で行っている2007年の漢字は「偽」であった。「偽」とは、【1】いつわる、だます、【2】にせ、にせもの、【3】人のしわざ、作為の意である。応募の主な理由としては、【1】相次ぐ食品偽装問題、【2】政界に多くの偽り、【3】老舗にも偽装が発覚、【4】他にも多くの業界に「偽装」が目立つ年とある。

さいわいIT業界は、陽には「偽」の対象にはなっていない。しかし、昨年、マスコミを賑わしたITシステム障害は、20システムを超えている。これらのシステムの特徴は、大略、(1)企業内外システム統合、(2)ネットワーク系大規模分散、(3)企業変革に分類でき、それぞれのシステム障害主要因は、以下のようである。

(1)のタイプは、類似企業間統合ゆえの仕様の詰めの甘さと、複数システム統合の複雑さゆえの品質確認不足が挙げられる。

(2)のタイプは、2点ある。1点目は、要件仕様定義時と異なる、ネットワーク利用者の想定外のトラフィック特性だ。2点目は、そのトラフィック特性に合わせたシステム構成変更の検討の甘さと構成変更時の確認試験を含めた作業誤りである。

(3)のタイプは、1990年代のBPR(Business Process Reengeneering)の時代から成功例の少ないタイプである。その原因は極めて単純だ。発注者側経営トップの変革への意志の強さと対象組織の変革への意識の問題である。意志強固な経営者はそうは多くない。

上記3つのタイプに共通している重要な要因がある。まさに、人のしわざ(注1)である。そして、ネットワークを含むシステムの向こうに存在する大量の利用者の認識漏れである。マスコミのスポットライトを浴びるのは、この認識の欠如である。

IT業界は、他業界ほどに成熟していないため、「偽」の【1】、【2】を意図的に遂行するほどには至っていない。しかし、【3】は作為どころか人のしわざに欠けることの問題と捉えるべきである。

ITシステムの成長は、今後その適用領域をますます拡大して行く。そして、ITシステム障害の影響も拡大の一途をたどる。そのため、新たなシステム障害機能を組み込むとシステムはますます複雑性を増して、障害の発生を増加させることになる。それゆえに、ITシステムの領域を拡大しながらも、システム障害の罹障範囲を制御できる新たな仕組み作りが必要になる(注2)。以下にその兆しを示す2つのシステム事例を紹介する。
一例は、SUICA、PASMOに見る、自律分散型アーキテクチャ採用による、ネットワークを介したシステム障害のなだれ減少を抑止する、BCP(Business Continuity Plan)の導入である。また、PASMOは、SUICA開発ノウハウの活用により、サービス開始時に数百台の自動販売機一時停止など小規模障害を起こしたものの、安定したサービスを継続している。

二例目は、2007年7月16日の中越地震の例である。NTT東日本は3箇所の通信設備停止と、4500回線の1/5の回線が被害にあったが、前回中越地震の経験を活かしてコンテンジェンシープラン(Contingency Plan)を発動、通信規制時間を前回の半分に短縮した。また、NTT DoCoMoは、多数の利用者が同時にネットワークを利用できる携帯メール機能を解放、携帯端末の通信を確保した。いずれも、3年前の中越地震の経験を活かした取組みであった。

上記事例に加えて、組み込みソフトあるいは航空宇宙関係などの他業界の高信頼ソフトウェア開発あるはシステムの安全設計手法を、IT界においても導入の時が来たと言える。このような新しい取組みの息吹が見えてきたIT業界の 2008年の漢字は、何であろうか。「信」かはたまた「安」か…。

(注1)人のしわざ:筆者は、「しわざ」と言う語感に魅かれてインターネットの世界を放浪して見た。その中で、以下の合意できる解釈とであったので紹介する。荀子は、「性悪説」で有名であるが、人の性(天性)は悪であると言うより未加工の素材のようなものと捉え、人為とあいまって美(善:筆者注釈)を形成すると説く(出典:早稲田大学文学学術院教授 森由利亜)。
筆者はこの論理を、ITは多様な可能性を持った道具(素材)であり、その可能性を人為(人の意志)が切り開いて行くという解釈に適用する。

(注2)SAFEWARE:System Safety and Computers(MIT教授 Nancy G. Leveson著)


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