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  第8回 全体像を俯瞰する難しさ
 
2007/05/07 (Mon)
シニアディレクター 上野 博英

ITプロジェクトを俯瞰する
 ITプロジェクトのクライシス・レスキューに入るとき、私は必ず全体像を掴んで(俯瞰して)から詳細の実態調査に入る。これが意外に難しい。プロジェクトの全体像を把握するための第一歩は、「プロジェクトがどんな状態に置かれているか」を掴むことから始める。次にプロジェクトを取り巻くステークホルダーは誰で、各人はシステムに対してどのように考えているかを考える。

全体像とは何か
 また、並行して全体像とは何を指すのかを自問自答することにしている。一口に全体像と言ってもプロジェクトが置かれている状況やステークホルダーによっても全体像の概念が違う。官公庁系や金融系のシステムでは、社会的に影響があるか、マスコミにどのようなインパクトがあるかなど広い範囲で全体を掴まえなくてはならない。企業グループの中核を担うシステムであれば、企業グループ内各社がステークホルダーとなるため、企業グループ全体を考慮しながらプロジェクトを考えていく必要がある。狭義の世界では、顧客側CIOやマネージャーが考える全体像、システムインテグレータ側マネージャーやSEが掴まえている世界、プログラマーが思っている世界、すべてが違う。これを常に頭の片隅に置きながら、全体像を掴まえていく作業が非常に重要である。
私は調査報告や提言を行うときにも、ステークホルダーによって表現を変えている。各人が抱えている全体像や世界に合った言葉で伝えていかないと真意は伝わらない。

全体像俯瞰の最初のステップ
 もう少し具体的に全体像俯瞰の工程を説明すると、最初に、プロジェクトを取り巻く社会的リスク、顧客企業リスク、システムインテグレータのリスクを大まかに洗い出し、ステークホルダーをレイヤ別にBy Nameで当て嵌めてみる。次に、洗い出されたリスクとステークホルダーの重要度を自分なりに設定する。これが全体像を捉える最初のステップである。このステップを経ないで、詳細の調査に入って行くことは非常にリスクが大きい。理論と経験に裏付けられたアナロジーはこのステップに於いて、有効な解決手法になる。

最近起き始めている全体像の揺らぎ
 しかし最近私が関与したプロジェクトを振り返ると、「ステークホルダーが、どのように考え、感じているか」という問いにうまく解をだせないケースが多くなってきている。錯綜するステークホルダーの思惑の多様性と複雑性、Webを初めとする技術の多様化、日に日に厳しくなる納期とコストパフォーマンス等々、かつての経験からのアナロジーでは解決できない課題。出口が見えない、迷路に入り込んだようなITプロジェクト。
過去のITシステム開発において蓄積され、共有してきた価値観や規範、標準が大きく揺らいできているのが、最近のITプロジェクトの実態ではないかと思う。

現代哲学におけるアポリア(袋小路、隘路)との類似性
 現代哲学ではこのような状態をアポリア(袋小路、隘路)と表現し、現代文明は深刻なアポリアに入り込んだと考える学者が多い。「哲学や思考の無力感による、一種の思考放棄現象の拡大」と同様にITプロジェクトにおいても、全体を俯瞰しながら本質を探究する思考を放棄する技術者が多くなってきている。生まれ育ってきた時代の違いなのだろか?そんなことをいくら嘆いても、目の前の問題は解決しない。大事なのは目の前にあるITプロジェクトのアポリアをはっきりと自覚し、あふれる情報や知識の中で今何が必要な明示的、暗黙的知なのかを見極めていくことなのではないだろうか。ITプロジェクトとは、プロジェクトをとりまく社会や人間的側面を反映しながらシステムを完成させていく営みである。
これを前提として、システムやプロジェクトの一部分だけを取り上げて問題とするのではなく、時には立ち止まり、全体を見極めていく営為こそがITプロジェクトを成功に導く方法なのだと私は考えている。


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