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  第4回 マネジメントにとって必要な情報とは?
 
2007/01/12 (Fri)
シニアディレクター 上野 博英

プロジェクトレスキューで初めに考える事
私は、ITプロジェクトのクライシス・レスキューやリスク診断を主に行っている。クライアントからレスキューやリスク診断の依頼があると、最初に行う事は「プロジェクトがどんな状態に置かれているか」についての情報収集と、それに基づくプロジェクトの現状分析である。ところがこれがなかなかうまく行かない。プロジェクトの情報収集で躓いてしまう事が多いためだ。情報収集のための第一歩は、プロジェクトで作成した資料の読み込みから始める。資料からこれまでのプロジェクトの経緯と現在のステイタスを把握する。次にプロジェクトを取り巻くステークホルダーを俯瞰し、ヒアリングすべきプロジェクトキーマンを洗い出す。ここまでは通常、順調に行く。ところが次のヒアリングで大きく躓いてしまう事が多い。

ヒアリングによる情報収集の難しさ
クライシスやクライシス一歩手前になっているプロジェクトでは、プロジェクトメンバーが冷静な判断を失っている場合が多い。PMやチームリーダー、キーマンにヒアリングするとそれぞれの主観による種々雑多な情報が集まって来る。このプロジェクトは最初から間違っており、本稼動は絶望的であるという悲観的意見や、逆にこのプロジェクトは何も問題は無く、外の人間がわいわいと騒いでいるだけだという楽観的見通し。当事者にとってはすべて正しい考えであり状況認識である。特に難しいのは、終了した事になっている開発工程の見極めである。要求定義や設計はとっくに終わっており、プログラム開発の段階でトラブルが起きている。そんなケースでは、往々にして本来実施すべき要求定義や設計の内容が根本的に出来ていない事が多い。つまり「フェイズ毎に終了しておかなくてはならない作業を棚晒しにして開発を進めている」のである。これは当事者からのヒアリングだけでは、分からない。何故なら当事者は、各工程を終了していると認識しているからである。

正しい情報とは
ここで見極めなくてはならないのは、「何が正しい情報であり、プロジェクトの状況を表わしているのか」という事である。情報理論の創始者と言われているフランスの数学者クロード・シャノンは、情報の本質を「正解を言い当てる確率である」と定義している。この言葉は「プロジェクトがどんな状態に置かれているかという解を出すための情報」に相通じている。しかし時には、あまりにも多くの情報や偏った情報を集めた結果、間違った判断を下しそうになる事も起きる。その時には一度プロジェクトから一歩下がり、第三者としてプロジェクトを俯瞰して見る事にしている。その過程で何が正しい情報か、必要な情報は何かが良く見えるようになってくる。

象徴的貧困
このような事象は、日常生活の中でも良く起きる事である。マスコミやインターネットから生み出され、増え続ける大量の情報。その結果、過剰な情報やイメージを消化しきれない人が、貧しい判断力や想像力しか手にできなくなってしまう。そんな状況をフランスの哲学者ベルナール・スティグレールは「象徴的貧困」と定義している。ITプロジェクトに於いてもこの「象徴的貧困」はしばしば起きている。そのため私は「収集した情報の多様性は、実は偽りの多様化を現しているかもしれない」という事を、念頭に常に置きながら情報収集を行うようにしている。

正しい現状分析を行うためには
この「象徴的貧困」から抜け出すためには、「色々な視点から考えられる豊かな判断力や想像力」を養う事ではないかと思っている。そのためITの専門家はもっと経営や哲学、社会学関連の知識を吸収しなくてはならない。しかし最も大切な事は、自分やプロジェクトにとっての「正しい現状分析を行うための情報とは何か」を探すために、積極的に現場に入り込む事と、一歩下がって全体を俯瞰する事を繰り返す事ではないかと考えている。現場に踏み込まず、冷静な第三者としてプロジェクトに物申すだけでは、プロジェクトは救われない。「事実」とは当事者によって違って見えるからである。


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